配送会社はドライバーだけじゃ回らない。カスタマーという“縁の下の主役”の話

正直に言うと、配送会社って外から見るとドライバーが主役に見えると思う。トラックに乗って走り回って、荷物を積んで、ピンポン押して、「はいどうぞ」って渡して帰る。汗かいてるし動いてるし、いかにも“現場の人間”って感じがする。でも実際は配達員だけで回っているかと言われたら、そんなわけがない。むしろ自分は、裏で支えてくれている人たちがいなかったら一日も持たないんじゃないかと本気で思っている。その代表がカスタマーの人たちだ。

自分たちが集配していると、たしかにいろんなお客さんに出会う。ちょっとクセの強い人もいるし、なんでそんな怒り方になるの?って人もゼロではない。でも体感で言えば、そういう人はほんの一部だ。ほとんどは普通に受け取ってくれるし、「ご苦労さま」と声をかけてくれる人だって多い。だから現場は大変だけど、四六時中クレームの嵐というわけではない。ところがカスタマーは違う。あの人たちは常に電話の向こうの誰かと向き合っている。そして電話をかけてくる人の多くは、だいたい何か問題が起きているからかけてくる。つまりスタート地点からして“平和”ではない。

自分たちがたまに当たるクレーマーも、カスタマーからしたら日常茶飯事なんだと思う。誇張じゃなく、毎日何件も何件も対応しているはずだ。それだけでもすごいのに、相手はお客さんだけじゃない。ドライバーからの問い合わせや確認もある。そしてドライバーは基本忙しい。繁忙期なんて特に余裕がない。正直に言えば、電話が鳴った瞬間「今それどころじゃないんだが…」と心の中で思ったことがないと言えば嘘になる。いや、ある。普通にある。そんな余裕ゼロのドライバーに対しても、カスタマーの人たちは「お忙しいところすみません」「お時間取らせてしまって申し訳ありません」と言う。いやいや、そっちのほうが一日中電話に追われてるだろうに、と思う。

あれは簡単なことじゃない。仕事だから割り切っているだけ、では説明できないと思う。怒鳴られても、理不尽なことを言われても、声のトーンを崩さず、状況を整理して、間に入って調整する。感情を飲み込んで、次の電話に出る。自分がもし一日カスタマーをやれと言われたらどうなるか想像してみると、たぶん午前中で魂が抜ける。昼には「ちょっと外の空気吸ってきます」と言ったまま帰ってこないかもしれない。それくらい精神力がいる仕事だと思う。

配送の現場は目に見える。トラックも荷物も汗も全部わかりやすい。でも会社がスムーズに回っているのは、表に出ないところでクッションになってくれている人たちがいるからだ。お客さんの怒りをそのまま受け止め、ドライバーの苛立ちも受け止め、その間で調整してくれる存在がいるから、現場は走れる。ドライバーがヒーローに見えるなら、カスタマーはそのヒーローが暴走しないように支える参謀みたいなものかもしれない。むしろ司令塔に近い。

自分は現場で走ることしかできない。でも走れているのは、つないでくれている人がいるからだと思う。電話越しに「お忙しいところすみません」と言ってくれるあの一言の裏側には、たぶん相当なストレスと我慢とプロ意識がある。そう考えると、本当に頭が下がる。これからは少なくとも電話に出るときの声くらいは、もう少し優しくしようと思う。思うだけで終わらせないようにしたい。たぶん、じゃなくて。ちゃんとやろう。

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