この業界に長くいると、クレームはもはや日常風景みたいなものになる。
朝の点呼のあと「今日は何事もなく終わってくれ」と考えてしまうのは、配達員あるあるかもしれない。
理由は本当にいろいろだ。
誤配、破損、遅配、時間指定に間に合わなかった、インターホンを押したのに聞こえなかった、しまいには「なんでこんな時間に来るんだ」なんてものまである。
中には「トラックのエンジン音がうるさい」というクレームもあって、正直それを言われると「じゃあ無音で配れってことですかね」と心の中でツッコミを入れつつ、やっぱり頭を下げるしかない。
さらにややこしいのが、自分が休みの日に起きたクレームまで、翌日に自分が対応することが普通にあるという点だ。
代わりに入ったドライバーが誤配したり、荷物を壊してしまったりしても、そのエリアの担当は自分なので、次の日に「昨日の件なんだけど」と呼ばれる。もちろん逆の立場になることもあって、自分のミスを誰かが代わりに謝ってくれていることもある。お互いさまと言えばそうなんだけど、やっぱり気まずさは残る。
この仕事は、誰が運んだかより「どのエリアで起きたか」が重視される。委託のドライバーが自分のコースでミスをしても、最終的な責任はエリア担当である自分に返ってくる。自分が悪くなくても、担当している場所で起きたことはすべて自分の責任になる。これを何年も続けていると、その重みがだんだん身にしみてくる。
クレーム対応で自分が一番大事にしているのは、「自分が悪いかどうか」は一度横に置くことだ。実際にはこちらのミスじゃないことも多い。でもお客さんにとってはそんな事情は関係ない。目の前で困っているのはその人で、荷物を待っているのもその人だ。だから、謝るときはいつも全力で誠実に、を心がけている。
絶対にやってはいけないのは、「それは自分じゃない」「知らなかった」「別の人がやった」というスタンスだと思っている。たとえそれが事実でも、お客さんの怒りや不満がそこで消えるわけじゃない。むしろ火に油を注ぐだけだ。
「ご迷惑をおかけしました。こちらで確認します」
「こちらの責任として対応します」
そうやって一度ちゃんと受け止めるだけで、空気が変わることがある。不思議なもので、さっきまで怒っていた人が少し落ち着いて、「大変だね」と言ってくれることもある。
そういう瞬間は正直かなり救われる!
ゲームで言えば、瀕死の状態から回復アイテムを使ってHPがじわっと戻る感じ。
クレームというとマイナスのイメージしかないけど、対応の仕方次第ではピンチがチャンスに変わることもある。「この人ちゃんと向き合ってくれたな」と思ってもらえれば、次に配達するときの空気がまったく違う。だからこそ、しんどい場面ほど逃げずにちゃんと向き合うようにしている。
今日もまた、どこかで誰かに謝りながら、トラックは走っている。

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